22 手もみ狭山茶

更新日:2023年03月31日

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鉢巻をした2人の男性が木箱の中で茶葉をもんでいるモノクロ写真

「こくり板」を用いた仕上揉

茶葉を手でもんでいる写真と茶葉を手で挟んでこすり合わせている写真と茶葉を手で挟みながらもんでいる写真の三枚一組の写真

左:重回転揉み(揉捻)、中:揉み切り(中揉)、右:転繰(でんぐり)揉み・こくり(精揉)

台の上に乗った乾燥した茶葉を両手でかき混ぜている写真

火入れ

市指定文化財(無形文化財・昭和52年8月1日)

 手揉み製法は、摘み採った葉を蒸してから荒茶に作り上げるまで、6時間以上もかかる重労働である。現在、製茶の工程はすべて機械化されているが、その内容は手揉み製法の工程を機械に置き換えたものである。良質な機械製茶の基礎には、手揉み製茶の知識や技術が欠かせない。手揉み製法では、焙炉(ほいろ)と助炭(じょたん)を用いる。焙炉は、熱源の炭(現在はガスコンロ)を入れる炉で、炉の上に鉄の棒と鉄の格子網を渡し、その上に和紙を張った助炭を乗せる。助炭面に蒸した茶葉を入れ、この上で揉み、乾燥、火入れを行う。助炭面の温度は、工程によって70~120度となる。
 煎茶の製法は、江戸時代の初期に中国から釜炒り煎茶が日本へ伝わった。この製法は、鉄の釜で茶葉を炒って加熱し、揉んで作るものだった。その後、京都府宇治田原町湯屋谷の永谷宗円(1681~1778)が、元文3年(1738)に蒸した茶葉を揉みながら乾かす、日本独自の「蒸し製煎茶」の製法を発明した。この製法は「宇治製法」と呼ばれ、1750年代頃から江戸でも蒸し製煎茶が飲まれるようになった。入間地域へは、狭山丘陵北麓の吉川温恭(よしずみ)(入間市宮寺)と村野盛政(東京都瑞穂町)が、文化・文政年間(1804~1830)に関東以北で初めて本格的な宇治製法を導入し、量産化と江戸茶問屋との取引を開始した。煎茶の製法が高度に完成した明治期、日本の手揉み製法は、宇治製・静岡製・狭山製に大別されていた。元々の狭山製は、形状より味を重視し「よりきり」で仕上げるもので「味の狭山茶」として知られていた。改良製では「回転揉み」や「でんぐり」「こくり板」を使い、形状に改良を加えた。また、「狭山火入れ」と呼ばれる独特の強い火入れは、現在でも狭山茶の特徴として知られている。
 手揉狭山茶保存会は、日本の伝統的な手揉み製法の技術を守り、若い世代へと受け継いでいる。現在でも毎年八十八夜に入間市役所前で行われる実演会などでその技を見ることができる。

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