72 西久保家旧蔵古今雛(にしくぼけきゅうぞうこきんびな)

更新日:2023年03月31日

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赤い台の上で台座の上に座っている女雛と男雛の写真

市指定文化財(工芸品・平成28年6月1日) 入間市博物館アリット所蔵

 この古今雛は、野田村(現入間市野田)の豪農商で旧名主、西久保家に伝来したものである。
 男雛は寸法高さ30.5センチメートル、幅32センチメートル、奥行24センチメートルで、両足と右手を欠失しており、布袴(ほうご)のような衣装をつけ、冠、太刀、笏をもつ。女雛は、寸法高さ29センチメートル、幅39センチメートル、奥行き32センチメートルで、十二単のような衣装をつけ、冠を載せる。いずれも目は描き目で、ややつり目の切れ長である。江戸の「古今雛」の特徴を持ってはいるが、玉眼でなく描き目であること等、その類型からやや異なる要素もみられる。
 頭の串には「三之分」と墨書がある。一般的に雛人形は首と胴を別々に仕入れて問屋がまとめることから、この古今雛は特注品ではなく3番の大きさで作られた既製品とみられる。また、享保6年(1721)以降、江戸では一般販売される雛人形の高さは8寸(約24センチメートル)以下という触書が繰り返し出されているが、男雛・女雛とも高さが1尺程あることから、市中で禁令が守られていなかった証拠ともいえる。
 畳座と台、箱にはそれぞれ墨書があり、箱蓋裏の「文政五年(1822)壬午年三月」の紀年銘は、埼玉県内で現在知られている古今雛のものとしては最古のものである。また、畳座と台の裏に「此ぬし 保坂か祢/とのさまだい」「おくさま だい/此主 保坂か年」、共箱には「すかも町/伊せやか祢」「巳奥様」屋号(ヤマ三)等とあることから、当初の所有者は巣鴨町(現東京都豊島区)の屋号が伊勢屋という商家の保坂かねという女性であったと考えられる。なお、その後、いつどのような経緯で西久保家に伝わったかは不明である。
 この古今雛は、平成3年(1991)に西久保家より市博物館に寄贈された当時、頭部に目立った破損があったことから、平成25年(2013)に専門家の手により文化財としての修復が行われている。
 西久保家旧蔵古今雛は、実物資料が少ない古今雛の中で製作年代、所蔵者の階層が明らかな基準資料として重要であるとともに、人形史や江戸の生活文化の研究においても貴重な資料である。

普段は非公開ですが、平成28年度アリットフェスタ特別展で展示します。ぜひご覧ください。
開催期間 平成28年10月22日(土曜日)~12月4日(日曜日)
場所 入間市博物館アリット 特別展示

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