68 歌舞伎「九変化扁額」

更新日:2023年03月31日

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木に描かれた赤で描かれた人物の周辺に立つ複数の人物の日本画の写真

市指定文化財(有形文化財・平成24年3月30日)

 この扁額は、天保4年(1833)3月に中村芝翫(しかん)(のちの4代目中村歌右衛門)が江戸中村座において九変化を上演した時の歌舞伎の芝居絵看板で、上演終了後に扁額に仕立て直したものである。大きさは縦137センチメートル、横139.5センチメートル、厚さ4センチメートルを測る。
 裏書には、天保4年7月に江戸麻布十番の小高亀吉が願主となり高倉寺に奉納したことが記されているが、高倉には西沢喜太郎が奉納したとの言い伝えも残っている。
 当時の江戸歌舞伎の絵看板や番付絵は、鳥居派が中心に描いており、この絵は鳥居派5代目の清満(きよみつ)(天明7年(1787)-明治元年11月21日(1869年1月3日))の手になるものである。
 絵は九変化の人物がそろって描かれており、上段に丁稚(でっち)・傾城(けいせい)・朱鍾馗(しょうき)・雨乞小町(あまごいこまち)、中段に老女(ろうじょ)・雷(いかずち)・座頭(ざとう)、下段には越後獅子(えちごじし)・文使(ふみづかい)の娘が配されている。また、額装時のものと見られるが、上部は人物像に沿って下地を刳り抜き浮彫り風にしている。
 線の太さや色彩から後世に手が加えられている可能性もあるが、清満の作風をよく残しており、扁額に直されているものの、天保年間にさかのぼる芝居絵看板が残っていることは珍しく貴重である。また、当時圧倒的な実力によって人気を博した演者の中村芝翫(4代目中村歌右衛門)の事蹟を伝えるものであり、歌舞伎の歴史を知る上でも重要な資料といえる。

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